花よりもなほ 愛蔵版 (初回限定生産) |是枝裕和
花よりもなほ 愛蔵版 (初回限定生産)
出演:
バンダイビジュアル
発売日 2006-11-24
元禄15年の江戸で、青木宗左衛門(宗左)は父の仇を追って、信州から上京した若侍。しかし、剣の腕は立たず、寺子屋で算術を教えていた。そんなある日、仇を見つけた。しかし、長屋の人々のとの心地よい暮らしになじんでしまった彼は、仇が妻子と幸せな生活を送っているのを見て“仇討ちとは何だろう”と考え始める。そして、彼が出した結論は長屋の人々を巻き込む騒動に発展していく。
『誰も知らない』の是枝裕和監督が初めて手掛ける時代劇。ドキュメンタリー出身で、人間の本質に迫る作品を、柔らかな視線で捕らえてきた監督らしく、人情で見るものを包み込むぬくもりある時代劇。主演の宗左に岡田准一。ほか長屋の人々に、宮沢りえ、古田新太、香川照之、原田芳雄、田畑智子、加瀬亮、仇役には浅野忠信と、わき役にいたるまで、スター俳優が勢ぞろい。岡田准一は、主演とはいえ決してスタンドプレーはしない、控えめな佇まいが、宗左のキャラにピッタリ。印象深いのは加瀬亮。うちにひめた恋心を愛する人に告白する場面は、この映画でいちばん胸が熱くなるシーンだ。監督が「楽しい嘘をついてみたい」と選んだ時代劇だが、弱者へのやさしい眼差しは、これまでの是枝ワールドに共通すると言えるだろう。(斎藤 香)
散るよりもなほ・・・。 2006-06-14
何度話をしても絶対にかみ合わない相手というのはいる。
どっちが良い悪いではなくて「違う」から「わからない」のだ。
仇討ちのために江戸に出てきて二年半、剣術の拙さももちろんだが、
見つけた仇が、今や平凡で幸せな生活を送るのを敢えて討つという
意味を模索し苦悩する主人公・宗左衛門に岡田准一がなりきり、
まさにはまり役。しなやかさと強さを兼ね備え、見えない苦悩を
抱えた未亡人おさえを演じる宮沢りえも美しい。
古田新太はじめ、長屋の住人たちなど、印象に残らない登場人物は
ひとりもいないのだ。
仇討ちはもう諦めたかと思えば、時折見せる鋭い表情に
やはり決行かとハラハラさせられる。「散りぎわは桜のように」が
武士の美学だが、その死に生を超える尊さがあるのかと
引き止めたくもなる。「仇討ちを」という父の遺言を
唯一の形見と言う宗左に「憎しみだけが形見ではないはず」
と諭すおさえの言葉が印象的。
武士として生きている人間と、そうでない世界観を知ってしまった
人間とでは違いすぎるが、その垣根は案外簡単に超えられるものだと
物語の端々に描かれていて、その自然さも心地よい。
派手さがないこの作品の、一貫した穏やかな空気感を
面白くない人にはまったく面白くないと映るかもしれない。
だが、好きな人はかなり好きだと思う。もちろん自分は後者だ。